Frank 5 2018年ユニバーサルの配給で公開されたコメディーです。1962年10月から12月まで行われた演奏ツアーが題材です。インテリの黒人ピアニストと学のない白人マネージャーが、親友になるいきさつを描きます。予算2千3百万㌦、収入3億2千8百万㌦だそうです。あらすじは省略して、背景を4点ほど補足します。1.M.アリーさんが演ずる「ドクター」ドン・シャーリー(Don Shirley, 1927~2013)は、ジャマイカ系アメリカ人だそうです。ケネディ政権の公民権運動(Civil rights movement)に協力して、黒人差別法(Jim Crow laws)の残る南部(Deep South)を巡業したそうです。運動の司令塔だったケネディ司法長官(Robert F. Kennedy, 在任1961~64)は、ニューヨークが地盤だったそうです。2.V.モーテンセンさんが演ずるトニー(Tony Lip, 1930~2013)は、マンハッタンのナイトクラブ(Copacabana)のホール主任(maître d'hôtel)だそうで、ガンビーノ・ファミリーの一員だったそうです。本作は、ファミリーの指示でシャーリーの求人に応募したよう描かれますが、上客の政財界VIPとコネがあったトニーは、事実上の指名でシャーリーのお守役を務めたそうです。3.トニーの本当の仕事は、巡業先でニューヨークの意向を「わかるように」伝えることだったそうです。たとえば、スタインウェイのコンサート・ピアノ(16万㌦くらいするそうです)のロゴ「Steinway」が、たびたび映し出されます。発音は、「(by a) stern way」(有無言わさず/スタインウェイを買え)に似ていて、ダブルミーニングは〇〇系マフィアの十八番だそうです。4.演奏ツアーは10カ所で、だいたい反時計回りにペンシルベニア、オハイオ、インディアナ、ケンタッキー、ノースカロライナ、テネシー、アーカンソー、ルイジアナ、ミシシッピー、アラバマの順だそうです。そして1960年の大統領選は、大接戦(得票率ケネディ49.72%、ニクソン49.55%)だったそうで、巡業先の4州は共和党支持、ミシシッピーとアラバマは事実上の棄権だったそうです。このためケネディ政権は、公民権(黒人差別撤廃)を再選の布石にしたそうです。 なお、追記ですが、2022年3月7日アメリカ上院で「エメット・ティル反リンチ連邦法」(Emmett Till Antilynching Act)が、全会一致で可決したそうです。1955年ミズーリ州の黒人少年がリンチで殺害されからやっとですが、反ヘイトクライム法の画期だそうです。(☆1つを進呈します)