yi 5 アメリカ?ミッドセンチュリーシネマの隠れた逸品がこの『危険な場所で』だ。52年の公開当時は批評家をはじめ、シナリオに大幅な変更が加えられてしまったこともあり製作者のジョン?ハウスマンや脚本家のA.I.ベゼリデスらにも不幸にも疎まれた、言うなれば呪われたフィルムといっても過言ではない本編。しかし、そこは鬼才ニコラス?レイが精魂込めて撮り上げたこだわりの作品に相応しく、その素晴らしさ、美しさの前にはやはり感動せざるを得ない。ちなみに一部で不評を買っているエンディングにまつわるシナリオの変更はニック自身と主演の二人が望んだものと言われ、そういった意味ではこれがレイ監督のみならず、携わった人々にとって入魂の作品だったと言えよう。日々、犯罪者と接触するうちに心が荒んでしまったジム?ウィルソン刑事。職務中の暴力沙汰を重ねてしまい上司に睨まれた挙句、遠く雪国の殺人現場へと飛ばされるジム。そこで彼が遭遇した事件とは、そして出会った人々は???。主人公を『生まれながらの悪女』、『太平洋航空作戦』、『キング?オブ?キングス』などでニックとコラボレーションした名優ロバート?ライアンが熱演。2011年ニューヨークにおいて大々的に回顧映画祭が開催されるほど再評価の高まっているロバート?ライアン。本編はニューロティックかつ悲しげな彼の魅力が最大限に活かされているという点でロバート?ワイズの『罠』や『拳銃の報酬』、フリッツ?ラングの『クラッシュ?バイ?ナイト』、アンソニー?マンの『最前線』、アンドレ?ド?トスの『無法の拳銃』、ルネ?クレマンの『狼は天使の匂い』などと並ぶ代表作に挙げられる。この刑事と出会うことになる訳ありの女性メリーに扮したアイダ?ルピノも素晴らしい。独立プロジェクトを立ち上げ、『ヒッチハイカー』や『二重結婚者』などの秀作ノワールを自ら監督してしまった才女は、ラオール?ウォルシュの『ハイ?シエラ』やロバート?アルドリッチの『悪徳』同様にここでも演技者として類希なる才能を発揮する。悲しみを背負った孤独な二人が出会うとき、切なさと労りを湛えた美しき波動がこのノワールに新たな輝きを付与する。ジョン?フォード一家の名パイプレーヤーで娘を殺害された悲しき父親ブレントに扮したワード?ボンドも緻密で繊細な演技を見せ、これは彼の代表作の一つと言っても過言ではない。イギリス人作家ジェラルド?バトラーの『Mad With Much Heart』の映画化にあくまでもこだわったニックのダイナミックかつ詩的で感傷的とさえいえる映像美はまさに本作に極まりといった出来栄えだ。『夜の人々』、『孤独な場所で』、『大砂塵』、『理由なき反抗』、『ビガー?ザン?ライフ』など、ニックの他の目立つ作品の陰に隠れがちな本編だが、これはある意味で他作品以上の素晴らしさを持つ傑作である。当時としては珍しいハンドカメラを駆使して臨場感ある都会の闇を映し出したと思いきや、一転して絵画のように麗しくも寒々しい山に抱かれた片田舎の雪景色を縦横無尽に活写するさまは圧巻。モノクロフィルムを扱わせたら天下一品の名カメラマン、ジョージ?ディスカントの腕前も冴え渡っている。加えてヒッチコック作品でもお馴染みの映画音楽の巨匠バーナード?ハーマンによる金管楽器とヴィオラを駆使した大胆かつムーディな音楽の素晴らしさは特筆に価する。※ネタバレの部分がありますので、ご興味のあるかたはどうぞ。フィルムノワールには珍しい、下手をすると甘ったるさ一辺倒になってしまうかのようなハッピーエンド。しかしファイナルカットはことのほか美しい仕上がりである。ニックの前作『夜の人々』や『孤独な場所で』には原作に忠実に当時の犯罪映画の定石だったバッドエンディングが付されていて、当初は『危険な場所で』にも同様の悲しきエンディングが用意されていたという。スタジオからの要請に応えた側面もあったものの、ニックは本作に独自性を与えるためエンディング部分の脚本を自らの手であえて変更したと伝えられる。一説には当時、映画の脚本に関しては極力原作に忠実であるべきとした暗黙の決まりを反逆児ニックは自らの判断で実験的に覆したとも言われている。この変更がフランスの批評家には逆に高く評価され、『カイエ?デュ?シネマ』の批評家で後に自身もメガホンをとることになるジャック?リヴェットは「(ある意味で)過ちともとれる変更は(既成の映画作りに囚われることのない)レイの重大な進歩」と本作をニックの個人的なフィルムとして称賛。確かに心荒んだ一人の男の魂の浄化が物語の骨子である以上、バッドエンディングではニック自らこだわったテーマが浮き彫りにならなくなってしまったはずだ。その意味でまさにこの変更こそが『危険な場所で』をニックのパーソナルなフィルムに仕立て上げている。演出、脚本、演技、撮影、音楽と映画を作り上げる要素の全てが力強く詩的な本編は時代の流れと共に再評価が高まってきた貴重な作品。名匠マーティン?スコセッシは兼ねてからこの『危険な場所で』を高く評価し、これが自作『タクシードライバー』のインスピレーションの源と位置付けている。今日では類い希な映像作家ニコラス?レイの代表作の一つとして、また50年代フィルム?ノワールの隠れた傑作としての評価を揺ぎ無いものにしようとしている本編の日本におけるDVD化を心から喜び祝福したいのとともに銀幕に永遠に刻まれたニック、ライアン、そしてルピノの誉れ高き記念碑をこの機会にとくと堪能してほしい。
H 4 MTBのボトムブラケット脱着に使用。社外工具+24mmメガネレンチでは全く歯が立たなかったので、こちらを使ってみました。シマノ純正工具を外径32mmのワッシャー+クランクフィキシングボルトで固定して一気に力をかけたら、アッサリ外れました。工具箱に入れるにはちょっと大きいですが、一つあると作業が捗ります。